春の花 2


目次(掲載順)

 

1-81 いわたいげき  1-82 あまどころ  1-83 しきみ

1-84 はりえんじゅ(にせあかしあ)  1-85 おおいぬのふぐり

1-86 たねつけばな  1-87 おらんだがらし(クレソン)

1-88 ひがんまむしぐさ



1-81

いわたいげき

(岩大戟)

トウダイグサ科

 

 トウダイグサ科のタカトウダイの生薬名が大戟というところと岩場に生えることから。

 

 茎の上部に黄色い葉が輪生する。カップ状の総苞のなかにおしべとめしべが収まっている。前年の夏に訪れた時に見つけていた。名前は知っていたが実物を見たのははじめてだった。その時は花はすでに終わっていたので、図鑑の花期は4月~という記載にしたがって再訪した。野島崎灯台の近くの一か所の岩だなに2株だけ生えていた。なんとか海の一部でも画面に入らないものかと岩に体を押し付けるようにして撮影したが、日陰になっている岩と日当たりの良い背景の露出差に苦労した。パソコンのソフトで調整してなんとか背後の様子がわかるようになった。帰宅後いろいろ調べたら鴨川の岩場にもありそうで、1年後にチャレンジしてみようと思っている。

 

野島崎  4月中旬 

16-35mm F13  +0.5EV  ISO400 

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1-82

あまどころ

キジカクシ科

 

 落葉樹林下に生える。以前より減ってきている印象。

 ナルコユリとは、茎に稜がある(角張っている)こと、葉がより幅広いことで区別できる。

葉の付け根から花の柄をたらし,先端だけ半開する緑白色の花を1,2個つける。

 

 この写真では花の状態がよくわかるように斜め下から撮影した。花が背後の葉にかからないようにカメラの高さを調節した。斜め下からの撮影で光を透過した葉がきれいな明るい緑に写った。林内で光が足りないのでISO感度を上げた。

 

千葉市若葉区  4月中旬

24-105mm  F4  ISO1600

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1-83

しきみ

 

 全体に芳香と有毒成分を含む常緑樹。しばしば寺社に植えられるという。この写真の撮影場所も寺の一角。

 早朝の雨上がりに撮影。ややクリーム色がかった花が打ちしおれたようになっている。光沢のある葉が濡れていっそうてかてかしている。

花は先にめしべが成熟し柱頭が開く。柱頭が閉じてからおしべが開く。こうして同花受粉を避けている。この写真を拡大すると、おしべが開いているのがわかる。

 

四街道市 3月中旬 

24-105mm しぼり8 露出補正なし  ISO1250 

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1-84

はりえんじゅ

(ニセアカシア)

マメ科

 

マメ科であるのでやせた土地でもよく育ち高木になる。はちみつの原料となるが、葉や果実には毒性があるという。

4月、甘い香りを放つ白い花を房状につける。

 撮影にあたっては白い花を下から仰ぎ見るように、背景には新緑の葉を画面に入れる。逆光気味になるので露出をかけて、花や葉が明るく表現できるようにする。木の枝が画面を真横に横切らず、斜めに入り込むようにした。

 

栄町  4月下旬

APS-Cカメラ55-200mm しぼり4.8  

露出補正+0.7  ISO400

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1-85

おおいぬの

                   ふぐり

 

 春早くから土手や空き地に空色の花をつける。しばしば群生するが全体にピントを合わせるのはむずかしい。

 花が大きければ広角レンズで近づきつつ群落全体を広くカバーすることは可能だが、小さい花でこの方法では難しい。花をある程度大きく写すには近づかなければならず、近づけば広角レンズといえども被写界深度が浅くなり、広い範囲にピントを合わせるわけにはいかない。そこで斜面に咲いている花をモデルにする。するとカメラの撮影素子と平行になる花が多くなりそれだけ多くの花にピントが合いやすくなる。ただしこの方法は斜面が植物でびっしり覆われている場合に限る。土がむき出しの場合は美しくない。

 ところで植物と昆虫の関係を精密に観察している田中肇氏の「花と昆虫、不思議なだましあい」(講談社2001)にオオイヌノフグリの受粉に関する「私の失敗」という記事がある。夕方花が閉じるときに自家受粉して花が落ちる、とある雑誌に書いたが後日実験をしてその記事が誤っていたと告白している。新しく咲いた花に印をつけて追跡観察したら、3日目の朝でも約半数の花は残っていたと。その間昼間は開き夜は閉じるという運動を繰り返していたのだと。

 

千葉市若葉区   2月中旬

APS-C (200mm)  しぼり2.8  露出補正ー0.5  ISO800

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1-86

たねつけばな

 

 小さく白い花をつけるアブラナ科の1年草。田の畔や水辺にしばしば群生する。奇数羽状複葉、花の後にできる果実は細長い円柱状でいずれもナズナとははっきり異なる。

 花が小さいのでアップでとらえても絵にならない。谷津田の脇を走る水路に群生しているところを環境を含めて写した方がよいと考えた。

 春の日差しが水路に降り注いでのどかな雰囲気が表現できたと思う。 

千葉市 3月下旬

100mマクロレンズ

しぼり F18

露出補正 なし

ISO400 

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1-87

おらんだがらし

(クレソン)

 

 これも水辺に生えるアブラナ科の植物。水のきれいなところに群生している。水辺の植物の多くが茎を切って水に差しておくだけで根が出て容易に挿し木ができるが、この植物もまさにそう。

 谷津状の地形で周りの丘陵部に降った雨が地にしみこみ低地に湧き水となってしみだす。そうした湧き水を集めて小さな川の源流部になる。透明度が高く、水の汚れ具合を測るCODの値が小さく、まさに清流。そういうところだから生えている。

 タネツケバナ同様に群生写真を載せることにした。流れに青い空と白い雲が映り込んだ。

 

千葉市 4月上旬

APS-C 18-55mm  しぼり7  露出補正なし  ISO400 

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1-88

ひがんまむしぐさ

 

 蛇の鎌首を想起させる大型の苞(仏炎苞)がふたのようにかぶさって、その下に棒状の花軸が顔を出している。苞の内部、花軸の下の方に小さい花がついている。これはサトイモ科の多くに共通する基本的なつくりである。ミズバショウはこの苞が白く、ふたのようにはならず仏像の光背のように立っているので印象が異なる(属が異なる)が、基本構造は同じである。

 この植物は3月から4月にかけて花をつけることからヒガンの名がついている。花の咲き始めには葉がない。手のように広がった葉は中央部が最も長い。しばしば中軸に沿って白い模様が入る。

 北総部で普通見られるのはカントウマムシグサだが、房総丘陵ではこちらのヒガンマムシグサが普通。このなかまは栄養状態によって雄花をつけるか雌花をつけるかが変わり、性転換することが知られている。

 撮影に際し、花軸が目立つ個体を選んだ。背後にも見えるように何本も生育していた。

君津市  4月初旬

70-200mm しぼりF4  露出補正なし  ISO400

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