初夏~夏の花 2


目次(掲載順)

 

2-80 ゆりのき   2-81 わにぐちそう      2-82 すいれん

2-83 うさぎぎく   2-84 こまくさ    2-85 はまかんぞう     

2-86 みやまあきのきりんそう  2-87 すずさいこ     

2-88 さいはいらん      2-89 ともえそう

 



2-80

ゆりのき

(チューリップツリー)

(モクレン科)

 

 しばしば街路樹として植えられている北米原産の高木。黄色いカップ状の花。花被片は内側に6個が花弁状に立ち上がり、外側に3個が蕚状となって斜め下に下がっている。めしべは円錐状に集まってモクレンの仲間の特徴を示している。めしべが多数あるこの形態は進化的には古いタイプ。

 花は通常高いところに咲き中をのぞくことはほとんどできないので、このたびたまたま低い枝が斜めに下がって花の中が見えたのはうれしかった。隣り合って2輪が咲くという幸運を生かすには、両方のしべにピントを合わせること。足を数十センチずつずらしながら、何枚もシャッターを切った。ようやく1枚、狙い通りの写真が撮れた。斜め上からの木漏れ日が葉や背景に注ぎ、光と影のコントラストを適度に表現できた。

 

武蔵丘陵森林公園 5月中旬

70-200mm  F3.5  露出補正なし  ISO400

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2-81

わにぐちそう

 

 落葉樹林の林床に生える。花の形がちょっと面白い。葉のつけ根から垂れ下がった花柄に2つの苞がつきその下に2個の花をつける。花の形は中央部の膨らんだ筒型。先端がおちょぼ口状に開いている。千葉市内ではあまり見かけることがない。

 林の木々が緑の葉を広げる時期に咲くので写真にすると色が少し緑がかることがある。背景も緑色なので、花が分かるように撮影するのは難しい。背後が開いている状況で撮影するとか斜め下から仰ぐように撮るとか工夫が必要。

 

千葉市若葉区  5月下旬

90mmマクロレンズ  F3.5 +0.5EV  ISO1600

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2-82

すいれん

 

 海外から持ち込まれた栽培植物。よく見かけるのは白、赤、黄色。5月から6月にかけて咲く。

 池底に根を張ったものは、水面に浮く葉がしばしば増えすぎるほど増えて重なり合い水面が見えなくなる。こうなると写真としては興ざめ。水底に大きな鉢を据え付けて、そこに根を張らせれば水面に浮く葉の広がる範囲も限られるから葉の間に水面が見えるようになる。できればそういう状態で撮影したいが、そのような池はほとんどない。

 この写真を撮影した池では、場所によって水面が見えていた。赤と白の2色が混在しているので、色彩的にもきれいに見えた。

 

 なお、国内で野生種はヒツジグサのみ。尾瀬ヶ原の池塘などで見られる。

 

千葉市 昭和の森公園 5月末

100-400mm  F16 -0.5EV  ISO400

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2-83

うさぎぎく

 

 ハイマツの生える高山帯の礫地や乾いた草原で見られる。

地上付近の葉がウサギの耳に似ているからという説がある。

 

 高山植物は厳しい環境に育ち短い期間で花を咲かせ、実をつけるという忙しい生活史を持っている。これらの花に会うためには一般に十分な体力としっかりとした装備を持っていなければならない。若いときにいくつかの山を歩いて高山植物に出会ったが、その頃は十分なカメラや撮影技術がなかった。一方カメラが改良され(「進化」という言葉は使わない)、多少の撮影技術を持つようになったら、膝に障害を抱えるようになり山登りはできなくなった。そうしたすれ違いから高山植物との出会いはあきらめていたが、NHKラジオの「山カフェ」で歩いて登らずとも高山植物に会える山として、木曽駒ケ岳下の千畳敷カールとともに乗鞍岳の畳平が紹介されたので、7月下旬思い切って行ってみた。乗鞍高原からバスで1時間足らずで標高2700mの畳平につく。お花畑に遊歩道があり、1周30分ほどで様々な花に会える。都会では連日35℃を超える猛暑でも、気温14℃。まさに別世界。例年になく花暦が早く進行し、名物のハクサンイチゲこそ終わってしまっていたがヨツバシオガマなどいくつもの花が咲いていた。

 このウサギギクも畳平の鶴が池周辺ほかでハイマツの脇などにたくさん咲いていた。背景に山の稜線が入ればいかにも高山植物の写真らしくなるのだが、そのような場面は見つからなかった。

 次の機会には畳平にある宿泊施設を利用して早朝から撮影したい。

 

乗鞍岳  7月下旬

70-200mm エクステンダー1.4倍使用 

しぼりF11 露出補正ー1EV ISO800

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2-84

こまくさ

 

 しばしば高山植物の女王といわれる。名前の由来は、花の特異な形が馬の顔を連想させるからとか。

 この植物ほど生育環境がはっきりしている植物は珍しい。まさに砂礫地。ほかの植物が生育できない環境に進出している。葉は細かく分かれ、葉の間に露を捉えることができるとともに、強い風にも耐性がある。若いころに登った白馬岳では稜線にこの花がいっぱいあった。もうそこでは会えない。乗鞍岳の畳平には歩道のすぐ近くにもたくさん咲いていた。再会に喜びの声をあげてしまった。

 歩道からちょっと離れたところでいくつもの株が集まっている状態を望遠レンズで撮影した。背景にある岩もそれなりに写るように絞りはやや深くした。例年なら一番の見ごろだろうが、花暦が早く進んでいたので花の先端が少し傷んでいるものが多かった。

 

乗鞍岳 畳平 7月下旬

70-200mm  しぼりF10 露出補正-0.7EV  ISO100 

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2-85

はまかんぞう

 

 海辺の岩場に咲く。ノカンゾウによく似た植物。ノカンゾウやニッコウキスゲと同じく1日花。この植物も海岸に生える植物の多くと同様に葉が厚い。これは潮風にさらされ浸透圧によって水分を失いやすい環境への適応。海に囲まれている千葉県だがハマカンゾウはそれほど普通にみられるわけでもない。ましてや群生状態は少ない。

 周りを切り詰めて花を大きく写すこともしたが、この写真のように周りの岩場を広く取り込んで写した方が主役の花は小さくなってしまってもずっとその場の雰囲気が表現できてよいと思う。

 背景が花より暗い岩場なので露出補正はマイナスにした。

 

銚子市 7月中旬

100-400mm  しぼりF11  露出補正ー0.5 ISO800

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2-86

みやま

あきのきりんそう

 

 アキノキリンソウの高山型(変種)。

 背が低く、花が大きく上部に集まっている。礫地や草原に生育。

 群生状態を写そうとやや斜め上から撮影。背後にイワツメクサが生えている。

アキノキリンソウは、海岸型もある。葉が分厚く、背がさらに低い。晩秋に咲く。

画像は 秋の花の項に掲載予定。 

 

乗鞍岳 7月下旬

24-105mm しぼりF7.1    露出補正ー0.3 ISO400

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2-87

すずさいこ

キョウチクトウ科

 

 ガガイモ属。同属の植物はしばしばツル性であるが、スズサイコは直立している。葉は対生。茎の上の方や先に花序をつける。同属のオオカモメヅルやコバノカモメヅルに似た花が咲く。

 草原に生えている。数が少ない上、他の植物に紛れて花が咲かないと全く目立たない。花は夕方に咲きだし夜にも開いており、翌朝閉じた。朝閉じる時刻は晴れた日には7時半ころから閉じはじめ8時には完全に閉じた。ただし、雨上がりで日差しが乏しい日では9時半でも咲いていた。日が当たると閉じるというのも正しいようだが、同属のクサナギオゴケ同様、夕方の斜光線が当たる状態では開いた姿が見られた。

 この草原には数本しかなく、しかも花の後でどれも実をつけることがなかった。繁殖させるのは難しそうだ。

 

千葉市若葉区 7月上旬

90mmマクロレンズ  F3.2   ISO800 

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2-88

さいはいらん

 

 落葉樹林の林床に咲くラン。形が武将の持つ采配に似ているとか。

 地際にちょっと見にはエビネに似た大きな葉を1枚広げているが、花の時期にはしばしばなくなる。

 花の最盛期には、花はほぼ横向きにつくが間もなく斜め下を向くようになる。

 ランの仲間の花はおしべとめしべで蘂柱(蘂柱)を構成する。唇弁は赤紫色。これらが見えるように斜め下から撮影した。背後のやや暗い部分に花が来るようにカメラ位置を設定した。夕方の弱い斜光線が差し木漏れ日が玉ぼけを作って画面に変化をもたらしてくれた。花の写真はできれば自生地で撮影したいものだと同じ時期に2か所ほどかねてから知っていた自生地を訪ねたが、残念なことにいずれも花に勢いがなく、ピークも過ぎていた。栄養を菌に依存するので元気な株が長く継続するのは難しいのかもしれない。

 

千葉市都市緑化植物園  5月上旬

90mmマクロレンズ  F3.2  +0.7EV   ISO3200

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2-89

ともえそう

 

 園芸種のビヨウヤナギやキンシバイと同じヒペリカム属(オトギリソウの仲間)。上から見ると巴模様(扇風機の羽のような形)をしているのが名前の由来。

 花は一日花なのでできれば咲き初めに撮影したい。手前に一輪咲いていたので長い茎を隠すことができた。草むらに咲くので、背後に強い直射光が当たると他の草が画面に映り込んでごちゃごちゃした印象になるから要注意だ。柔らかな光条件で撮影できた。花の高さは画面の上から1/3かやや下あたりに置くとバランスがよくなることが多い。

  

千葉市 若葉区    6月下旬

90mmマクロレンズF3.5   +0.5EV ISO800

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