残暑のころ~秋の花 2


目次(掲載順)

 

3-79 おおばくさふじ  3-80 なんてんはぎ     3-81 ひよどりばな

3-82 わだん 3-83 とねあざみ  3-84 はまあきのきりんそう



3-79

おおばくさふじ

 

 秋の野はマメ科植物の花が目につく。

 雑木林の周辺部、ススキの小群落の近くの日当たりのよいところに赤い花を見つけた。しゃがみこんでみると小さいクサフジの仲間。小葉の数が4~6枚と少ない。葉の形も幅広く、葉の先がツルになっている。オオバクサフジと同定。

    千葉県レッドデータブックを見ると、「個体数がかなり少ない重要保護生物」となっている。

 透過光が花の色を一層鮮やかに見せてくれる。飛び出している花を蕚から先までなるべくピントを合わせつつ背景はそれなりにぼかすことと葉の形も分かるようにと工夫して撮影。

 

千葉市若葉区 10月上旬

90mmマクロレンズ しぼりF2.8  露出補正+1  ISO800

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3-80

なんてんはぎ

 

 オオバクサフジとよく似た花をつける。同じソラマメ属。ススキ草原などでごくふつうにみられる。マメ科にしては葉の形がちょっと変わっている。マメ科植物の葉はフジのように多くの小葉からなる複葉かクズのように3枚の葉を出す複葉が多い。ところがナンテンハギは1つの節から2枚の葉が八の字のように開いているだけ。頂小葉にあたる葉は小さなとげ状に退化している。

 花期は長く夏にもみられるが、撮影したのが9月、10月なので秋の花として紹介する。周りに草が多いので少しかき分け、斜め下から花と葉の両方が写るように撮影した。

 

千葉市若葉区 9月下旬

90mmマクロレンズ  しぼりF3.2 露出補正+1.7  ISO200 

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3-81

ひよどりばな 

 

 秋の七草のフジバカマにそっくりな花をつける。草はらや林縁部に普通にみられる。しばしば群生し、見ごたえがある。咲く時期は個体差が大きく7月ごろから秋まで見られる。

 葉の表面がざらつくことでフジバカマと区別できる。高原にはよく似たヨツバヒヨドリが見られる。フジバカマやヒヨドリバナは2枚の葉が節に向かい合ってつく対生だが、ヨツバヒヨドリは、3~4枚の葉がつく輪生なので区別はつく。

 ヒヨドリバナは葉の表面に黄色っぽい模様が入っていることがある。これはウイルスに感染しているものだ。といって枯れるわけでもない。

 この写真は里山の林縁の斜面に群生しているものを撮影した。花を結ぶ線が右上から左下に並ぶように意識した。

 こうした植物を維持するには適切な草刈りが必要である。刈はらい機で一気に刈るといろいろ差しさわりがあるので、広い範囲というわけでもないから人力で刈っている。ただ刈り方が不適切だったか、その後つる植物が覆ってこれほどの群生ではなくなっている。

千葉市若葉区  9月

しぼりF5.6  露出補正ー0.3  ISO400

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3-82

わだん

 

 ヤクシソウに似たキク科の花。海岸の崖に張り付くように生育。

 葉はしばしばキャベツのようと表現されている。厚みのある大きな柔らかそうな葉を何枚も持つ。側枝を何本も伸ばし、その先にブロッコリーのようにたくさんの頭花をつける。各頭花は5つの舌状花からなる。舌状花のおしべ(花糸)は集まって筒状になり、筒の内側に花粉をつける。めしべはその中を伸長していき、やがて外側に花粉をつけて顔を出す。雄性期である。やがて柱頭を2つに広げ、他の花の花粉を受け入れる。雌性期である。こうして自家受粉を避ける。これはアザミのなかまの筒状花のつくりに似ている。

 ワダンの頭花は一斉には咲かない。写真で見られる通り、つぼみもあれば終わった花もある。咲いている花でも雄性期のものもあれば雌性期のものもある。 

 千葉県は3方が海に囲まれているが、海岸植物がみられる状態の磯は多くはない。このため磯の背後の崖にはめずらしくないワダンであるが、県全体としては少ない。

 

千葉県 11月初旬

90mmマクロレンズ   F5.6  露出補正+1  ISO800 

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3-83

とねあざみ

(たいあざみ)

 

 北総地域で在来のアザミは3種類。春にはノアザミ、秋にはノハラアザミとトネアザミが咲く。

 秋に咲く2種のもっとも簡単な識別は、頭花の下の総苞片の棘状の部分の形。ノハラアザミは、これが斜上しているがトネアザミでは真横に広がっているか反り返って先が斜め下を向いている。

 しかし、ときには斜上しているものもある。そうなると困ってしまう。ただ全体の花姿はそれぞれ異なっている。

 トネアザミは多くの場合、茎の中ほどから上で枝分かれして全体にたくさん枝を持ち、その分一株の花の数が多く同時にたくさんの花が咲く。一方、ノハラアザミは茎の上部で枝分かれするも、枝の数は少なく花数も少ない。同時に咲いている花は通常1つ。

 この写真は拡大してみると総苞片が反り返っており、典型的なトネアザミ。たくさんの花にピント合わせができるような咲き方だったので絞りは開けて背後のセイタカアワダチソウを黄色いボケにした。

 

四街道市 10月末

90mmマクロレンズ F3.5  露出補正+0.3  ISO800 

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3-84

はまあきの

  きりんそう

 

 海辺の岩場に生える。個々の頭花はアキノキリンソウによく似ているが、密集している。強風の吹くことが多い海辺に生育する植物の多くのように背丈が低く、葉も厚い。

 千葉県レッドデータブックによればランクBの重要保護生物で、ハチジョウアキノキリンソウとアキノキリンソウの交雑種である可能性が高いとある。

 秋の日差しを浴びて2株が並んでいた。周りはハチジョウススキであろうか。標準レンズでしぼりを開け気味にして撮影。

 

千葉県 11月下旬

24-105mm  F5  露出補正+0.7  ISO400 

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