目次


Ⅱ-1 被写体選び

Ⅱ-2 マクロレンズと望遠レンズ

Ⅱ-3 撮影モード

Ⅱ-4 ピント合わせ

Ⅱ-5 カメラの高さ

Ⅱ-6 ホワイトバランス

Ⅱ-7 露出補正

Ⅱ-8 光を活用する

Ⅱ-9 構図、間の取り方、花暦をつくる、サークルに入ろう


 花のクローズアップ写真の撮り方を紹介します。要点は以下の通りです。

 

① 被写体は新鮮で傷や汚れのないものを選ぶ。

② 何を主役にし、何を脇役にするかを意識する。

③ 背景や画面の四隅にも気を配る。背景の選び方で写真の印象が変わる。

④ クローズアップ写真はマクロレンズに限定せず、広角レンズで最接近して周りを

  取り込んだ写真、望遠レンズで前後をぼかして主役を浮き上がらせる写真など、

  レンズの特性を生かした撮り方を工夫したい。

⑤ 撮影モードは「絞り優先」モードにする。アップ系では絞りは開け気味で被写界

  深度を浅くして主役を背景から浮き上がらせたい。

⑥ ピントはオートフォーカスを過信せず、しっかりと花のしべに合わせる。

⑦ カメラの高さは花の高さにするのが基本。必要に応じて上下させてみる。

⑧ ホワイトバランス(WB)は基本は太陽光(晴天)モード。

⑨ 露出は段階補正して撮っておく。

⑩ 構図法を各種の指導書で学ぶ。植物の生態を知る。写真展を見て良い写真を知

  る。日本画や生け花にも学ぶことが多い。フォトグラフの語源は光を描くこと。

  光を生かした写真を撮ることが最も難しい課題である。デジタルカメラになって

  ランニングコストが下がり、その場で何枚も撮影できるようになったので、考え

  ながら悩みながらたくさん撮影するのがお勧め。


 花の写真はともすると風景写真に比べ低くみられることもありますが、定年退職後の趣味という点では以下の点で優れています。大いに楽しみたいものです。

 

1 モデル料がかかることもなく、遠くまでいかなくても撮影場所がある。

2 季節を感じながら出歩くことで健康維持に役立つ。

3 四季折々被写体が替わる楽しみがある。

4 身近な自然に関心が生まれる。自然のしくみを知る喜びが味わえる。

 

 管理者は、千葉県で花の写真を楽しみたい市民に熱心指導されてこられた田中雅康氏に約15年師事しました。氏は花の写真を高いレベルに引き上げ、NHK文化センター千葉やコミュニティセンター等における指導を通して市民に普及させました。2014年暮れに亡くなられましたが、まだまだ教えを請うべきことが山積していました。このコーナーでは管理者が師匠から習ったことのうち実践を通して復習してきたことを、これから花の写真を楽しみたいと思っている初心者向けに紹介します。今は少しでも花写真を楽しみたい方に、その教えを語り継ぐのが大切と思い、このHPを開設しました。


Ⅱ-1 被写体選び

 

 花の写真は生け花と似たところがあります。素材は咲き始めでまだつぼみがあるくらいのものがよいでしょう。ピーク過ぎて終わった花がくっついていると興ざめなので傷や汚れのないものをさがすように心掛けましょう。

 

① 主役と脇役を意識する

 アップで撮るときもできれば花が複数あるものを選びたい。複数の花にピントを持ってくるのは難しいけれど、カメラ位置で何とかなる場合があります。それがかなわないときは、一つを主役にし他の花をわき役として右か左の背後にぼかして取り入れます。このときも両者が画面上同じ高さにくるよりは、若干でも高さに差がある方が画面上変化があってよいものです。特に複数の花が上下に並ぶのは避けたいです。立ち姿を撮るなら低い方の高さは高い方の高さの7割くらいだと美しく見えるものです。これも生け花の構図と同じこと。2つとも同じ高さだとどちらが主役か分からなくなるから。このようにつねに何を主役をにし、それを盛り上げるわき役を何にするか意識しておきましょう。脇役は主役の見え方を高めるものでなければなりません。まして画面の隅に不必要なもの、汚いものが写りこんでいないか慎重にチェックしなければなりません。これは意外に難しいことです。

おどりこそう(踊り子草)

 雑木林の縁の明るい環境に生える。複数の段に唇型の花輪生してつける。

 ここでは高さの異なる2株を写している。高い方が右から1/3くらいに、低い方が左から1/3くらいに位置している。このように高さが異なる方が、同じ高さよりは変化があってよいように思える。

 

② 背景に気を配る

  花を画面の中で小さめに配置するとなると、画面の大半を背景が占めることになります。ですから花の写真の良しあしを左右するのは背景だといっても過言ではありません。絞りを開放気味にして背景をボカせば何でもよいかというとそうもいきません。背景の一部として日の当らない場所に暗い緑の植物があったりすると、中途半端に暗いまだら模様が写ることがあります。これは全体の印象を暗くするだけです。背景はスクリーンのように単調であったり、色や形の境目が直線では興ざめです。そういう点で背景を選ぶことは重要な作業です。

 スポットライトのように主役に光が当たって、背後は真っ暗という写真をプロが撮ることがあります。結構魅力的です。印象的な写真です。ただし構図としては単純なのでそのような写真ばかり撮ることは勧めません。背景にボール紙をおいても似たような写真は撮れます。せっかく野外で暮らしている植物を撮影するのなら、できれば生息環境もうかがえるように撮りたいものです。(参照 春の花1-10

 一方背景に強い光が当たっていると草はらの枯れた茎、樹木の枝などで光が強く反射し、背景に直線的な筋が入りこむ。これも見苦しい。なめらかなボケが得られるよう背景の状態も慎重に検討したいものです。被写界深度確認ボタン(プレビューボタン)を効かせて、モニターでチェックすることが大切になります。

 

 光が感じられるような背景は主役の花を引き立てます。曇天ののっぺりした光条件では、主役の配置がうまくいっても印象的な写真にはなりにくいものです。

モニター画面やファインダーをのぞいた場合(しぼりF10)

レンズのしぼりが開放状態(F3.5)の像が見える。

プレビューボタンを押したときに、ファインダーやモニターで見える状態(しぼりf10)。

しぼりF10に絞った状態で見える。ピントの合う範囲が深くなっているのが分かる。

絞りの穴が小さくなっているので、シャッター速度を遅くして光を必要量取り込もうとしているのも分かる。



Ⅱー2 マクロレンズと望遠レンズ

 マクロレンズはフィルム面(撮像素子)に等倍で写せるように設計されたレンズ。同じ焦点距離のズームレンズより被写体に近づけます。単焦点レンズなので開放F値が小さく「比較的明るいレンズ」です。開放F値が小さいので絞りを開放気味にして撮影すると背後がぼけます。その結果主役が背景から浮き立って強調されます。焦点距離が長い望遠系のレンズの方が大きなボケが得られます。ただし数mm以上距離が異なる複数の花にピントを合わせるのは困難になります。35ミリフルサイズのカメラ換算で焦点距離が90~105mmや180~200mmのものがよく使われます。

 ここで注意してほしいことはマクロレンズは被写体に近づけるために主役をやたら大きく撮影しがちになるということです。これでは被写体の花の種類が異なってもどれも同じ雰囲気の写真になりがちですし、情感もあまり感じられない作品になってしまいます。少し引いて主役の周りを入れるように撮ってほしいものです。

 マクロレンズにも50~60mm,90~105mm,180~200mmなどがあります。柵などがあって被写体に近づけない条件では望遠系の方が有利。一方主役の花の周りの光景を取り込むには100mm前後のマクロレンズが得意です。50~60mmマクロレンズでは被写体をある程度の大きさに写そうとすると、被写体までの距離(ワーキングディスタンス)が短くなって光を十分に取り込みにくいなどあまり使い勝手は良くないように思います。

 もちろんマクロレンズがなくても花のアップ系の写真を撮ることはできます。300mmくらいの望遠レンズはF5.6のしぼりでも被写界深度が浅いので、前後をぼかして主役を浮き立たせることができます。ただし一般に最短撮影距離が長く、主役を大きく写すことは難しいので野の花のような小さな被写体を撮ることは向いていません。一方主役が小さめに写るので主役の周りを入れて雰囲気のある作品を作るのには向いています。さらに周囲の雰囲気を伝えられるレンズが広角レンズです。標準系のズームレンズより、広角系のズームレンズの方が最短撮影距離が短く花に接近できるので花を相対的に大きく写せます。加えて画角が広いので周辺の雰囲気を画面の中に表現できます。絞りを開ければ思った以上に背後をぼかすことができます。花の写真はマクロレンズを使用するものと言った固定観念を捨ててレンズを替えて見ると、いままでとは異なった表現ができます。

 マクロレンズは普通の単焦点レンズとして使えます。人物写真でも100mmくらいのマクロレンズは使いやすい。開放F値が小さいのでしぼり開放気味で写せば背景がぼけて主役の人物が際立つのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マクロレンズ

 シグマの180mmマクロレンズ(旧型)

フィルムカメラの時期から使用している。重いのでバランスをとるために三脚に取り付ける台座がついている。


Ⅱ-3 撮影モード

 ここまで述べたように、クローズアップ気味の花の写真では主役を際立たせたいのでしばしば背後をぼかします。これは絞りを開けて被写界深度を浅くすれば実現します。したがってカメラの設定は絞り優先モード(「Avモード」「Aモード」)に設定します。画面上どこまでピントが合うかを常に意識します。シャッター速度は自動的に決まります。

 ファインダーあるいはモニターで見える画面は絞り開放時の状態です。ですから実際撮影した時は絞りによってピントの合う範囲が異なってきます。「被写界深度確認ボタン(プレビューボタン)」がついているカメラでは、ボタンを押すと撮影時のしぼりにすることができるので、撮影されたときにどこにピントが合い、どこがぼけるのかをあらかじめ確かめられて便利です。

 

 

 

 

 

 

 

撮影モードはしぼり優先(Av)モードにする。

 

 

 

 

 

 

 

撮影情報の表示。

しぼり4.5、ISO 250

露出補正ー1/3、WB 晴天モード、露出の測定は多分割測光、画質はRAWで撮影 などが表示されている。



Ⅱ-4 ピント合わせ

 花の写真ではピントはめしべ・おしべ(「花芯」)に合わせるのが原則。そうすれば花びらのどこかには必ず合うものです。花芯に合っていないと、なんとなくぼやけた印象になるから不思議です。

 最近のカメラではオートフォーカス機能および手ぶれ補正が改良されていますので、手持ちでオートフォーカスでも正確なピント合わせをすることができるものがあります。三脚にカメラを固定し、モニターに画像を表示する「ライブビューモード」にして構図を確認することや、画像を拡大してピントが正確に合っているかを確認することは面倒がらずにやった方が失敗が少なくなります。ピントがオートフォーカスでは微妙にずれている場合もあり得るので、そういうときはマニュアルフォーカスに切り替えて微調整がをします。

 花のある風景では全体にピントを合わせる「パンフォーカス」にすることも多い。このときは画面手前3分の1位のところにピントを合わせてしぼりをF16くらいまでしぼります。群落的に広がりをもって咲いている場面では、真ん中の距離の花だけにピントを持ってくる場合もあるでしょう。こういう場合は望遠レンズを使い、しぼりを開けて撮影するのが有効。前ボケと後ボケに挟まれて主役の際立つ写真になるのです。

 ところで三脚を使う場合は、手ぶれ防止装置のスイッチはOFFにしておきます。そうでないと逆に変なブレを生じることがあります。


Ⅱ-5 カメラの高さ

 カメラの高さは花の高さに置くのが基本。最近はスマホなどで撮影する人をよく見かけるようになりましたが、多くは斜め上から撮影しています。人物撮影だって子どもを撮るときは、しゃがんで子どもの高さで写すでしょう。まして花の写真では。ぜひとも花の高さで撮りましょう。

 きれいな花は昆虫媒花。昆虫は花の近くでななめ上から近づき、花の高さに降りて花粉を運ぶ。だから花の写真撮影では昆虫の視点をもちたいものです。ヒトの視点で見たときとは別の姿を見せてくれます。花の形は昆虫との共進化の表れです。虫の視点で見ると、昆虫をひきつけ、止まらせ、誘い込む巧みな装置を持っていることに気づかされます。自然の「驚異」を実感できるのも楽しみです。

(参照 残暑のころ~秋の花3-6

 群落的に咲いている花を撮る場合は、他の花より高い花を主役にして前後をぼやかせるとか、斜め上から群落全体にピントを合わせるとか、斜め下から見上げるように撮るとかもできます。

はなしょうぶ

 カメラを花の高さにおいて横から撮影。この場合背後の草に強い光が当たっていると、花は背景に紛れてしまって目立たなくなる。右上の花が最も高く、左に少しずつ低くなる花を配置することで、花をつなぐラインが弧を描くように見える。



Ⅱ-6 ホワイトバランス

 ホワイトバランスは原則晴天(太陽、お日様)マークでいいでしょう。曇りだからといって曇りモードで撮影すると変に赤みがかることもある。撮影モードをjpg(ジェイペグ)ではなく、RAW(ロー)にすれば撮影後パソコンで変更することもできます。


Ⅱ-7 露出

 カメラに入る光の量を調節するのが、絞りとシャッター速度。花写真では絞り優先モードにするので、しぼりを絞ればシャッター速度が低下し、しぼりを開ければシャッター速度が速くなります。同時に被写界深度が変わることはすでに述べてきました。これはしばしば蛇口の大きさと水をコップにいっぱいにするまでの時間にたとえられています。蛇口(しぼり)をあければ、速い時間でコップに水がたまる(シャッターを短い時間だけ開けておく)。逆に蛇口(しぼり)を狭くすれば、コップに水がたまるまで時間がかかる(シャッターを長い時間開けておく)。

 カメラの設計上、白いものも黒いものも灰色に写ります。白いものを白く写すにはプラスの露出補正をして、開口時間を長くして光を余計に取り込みましょう。逆に黒いものを黒く写すにはマイナスの露出補正をして開口時間を短くして取り込む光の量を減らす。

 カメラの測光方式には3種類あります。一般には「多分割測光」とか「評価測光」という方式に設定します。操作がもっとも簡単でだいたい適切な露出が測れます。この方式では主役が大きな暗い背景にあるときは、背景に引きずられてカメラは黒いものを灰色にするために露出をオーバー気味に示してしまいます。すると主役は明るすぎてしまうのでマイナス補正を必要とします。逆に白っぽい背景に主役があると、主役はアンダー気味に写る。そこでプラスの補正を必要とします。クローズアップで主役が画面の大半を占める場合には、黄色や白い花を写す場合は、露出アンダーにならないようにプラス補正、濃い赤い花を撮るときは露出オーバーにならないようにマイナス補正が基本です。緑色が多ければ露出補正は原則不要。このように露出補正は大変難しいです。そこで最初から数段階の異なる露出で撮影しておくのがよいのです。モニターで確認すればよいと思われるが、明るい戸外でモニターはよく見えないし、適切な明るさで表示されているかあまりわからないのが現実。多少の露出の過不足は、撮影後パソコン上で調整が利きますが、現場で適切な露出で撮影するのが基本です。

黒い部分と白い部分が隣り合っている

紙製のペンケース。両者の境目を中心に撮影。黒い部分は黒く、白い部分も白っぽく写っている。

ところが、黒い部分だけあるいは白い部分だけを写してみると・・・

黒い部分だけをアップで撮影。

灰色に写る

露出補正(-2)するとほぼ黒く写った。

白い部分だけをアップで撮影す。やはり灰色に写る。

露出補正(+2)するとほぼ白く写る。



Ⅱ-8 光を活用する

 観光地で互いに写真を取りあうとき「あら 逆光だからだめだわ」などという声をよく聞きます。たしかに逆光では人物が黒く写ってしまいます。本来露出補正をプラスにする場面です。さらに顔に明るさを補えれば(フラッシュをたくとか、白い紙で光を顔に反射させるなど)、髪の毛を透過した光は美しい映像を提供してくれます。むしろ順光で正面から撮ると人物はまぶしさから目を細め、顔に全く影がないので平板な顔に写るのです。室内でのモデル撮影では、モデルの斜め前から光を当て、極端な影がでないように白い板(レフ板)で光を補ってやっているようです。

 花の写真でも似たことは言えます。花は通常太陽の方を向いて咲きます。正面から撮影すると順光となり立体感のない写真になりがちです。そこでお勧めは斜光線や透過光の光で撮影すること。斜光線を得るには午前中の早い時間帯や夕方の撮影となります。花びらや色づいた葉を光が透過すると、色彩的に大変美しく見えるものです。ただし露出補正で工夫が必要です。光次第で写真が生き生きしたり、つまらないものになったりします。

 花を撮影するのに主役が日陰で背景が日向という場面も意外に向いています。主役が日陰なので強いメッセージはありませんが、しっとりと控えめな感じに写ります。また花のもつ本来の色が再現しやすいです。プラス補正で撮影すると、光のあたる背景が一層明るくさわやかに表現できます。特に濃い色の花では効果が実感できるでしょう。主役の花に当たる直射光を紙などで遮る方法も有効です。この場合も主役の花に合わせた露出にしましょう。通常プラス補正です。ぜひ試してみてください。

参照 残暑のころ~秋の花3-1

 

 背景に木漏れ日のある林、池や水滴からくる反射光を取り入れるとしぼり開放気味では光の輪(「玉ボケ」)が得られます。主役が引き立つ非常に印象的な写真になります。 (参照 春の花1-1、1-2

 光の強さが実は問題です。強い光では日の当るところと陰になるところができてコントラストの強い写真になります。日本の花でこういう光条件がふさわしいものはほとんどありません。ぎたぎたして下品な写真になります。やわらかな光が降り注ぐ条件がベストです。ただヒマワリなど強い光がふさわしい場合もあります。また花のある風景を撮影する場面では、晴れて光が当たっていても多くは問題はありません。 

がくあじさい(紫陽花)

① 花が右上を向いているので、左下 

 に寄せた。

② 花の下の枝が目立つので、前ボケで

 隠している。

③ 後方の林の木々の葉の間からのこも

 れびが玉ボケとなって、間を埋めてい

 る。

 サーキュラーPLフィルター(c-PL)(偏光フィルター)を使うと、葉からの光の反射を抑え、色がくっきり表現できることがあります。フィルターを装着し、ファインダーをのぞきながらリングを回していくと暗くなったり明るくなったりすれば、フィルターの効果があるというです。一般に太陽を背にしてある角度の範囲で効果があります。白っぽく見える青空がくっきりとすることもあります。なんとなく白っぽく写る紅葉にフィルター効果がはたらくとくっきり鮮やかな色になることがあります。ただ効果を効かせすぎると花の輪郭があいまいになることがあるので、クローズアップ気味の写真ではあまり出番がありません。

 いずれにしても光をうまく利用できるかどうかが写真のできを左右する重要なポイントであることは間違いありません。難しいだけにチャレンジし甲斐があるともいえましょう。









PLフィルターの効果がないと、

ユリの右後ろの葉がテカテカし

ている。

 

 

 

 

 

 

 

PLフィルターの効果があると、

ユリの右後ろの葉のテカリが抑

えられている。



Ⅱ-9 構図、間の取り方、花暦をつくる、サークルに入ろう

 風景写真の構図法については多くの本が取り上げています。花の写真もそれに準じて考えればいいと思います。たとえば3分割法、4分割法、対角線を生かす、額縁構図、大と小の対比、繰り返しのリズムなどなど。ガイド本を数冊購入して繰り返し読むことをお勧めします。ともすると早々と自分流を確立してしまい、狭い枠の中で固まってしまう人もいないわけでありません。ですから実際に撮られた写真を展示会や書籍でたくさん見ることが大切です。

   

 間の取り方

 1つポイントを紹介しましょう。花の向いている方向を空けましよう。テレビのインタビュー番組が参考になります。横向き画面では話者は画面の一辺に近く位置し、顔の向いている方向が空いています。これは構図の定石です。ユリやツツジなどの横向きのラッパ型の花はなおさらです。ホタルブクロなど釣り下がっている花は、下の方に空間を多くとります。ただし空間がカラーのボール紙を置いたような単純なものにならないようにしたいです。色の濃淡や色合いの違いで埋めたいものです。日本画に学ぶことが多いです。

 

 花暦をつくる

 季節ごとに被写体が交代するのが花写真の楽しみです。足で稼いだり、同好の士との情報交換で、いつ頃どこでどんな花が楽しめるかを調べ、花の名前・季節・場所を一覧表で整理しておくと撮りそこないが減ります。もちろん年によって花の時期が前後しますので、必ず最新情報をチェックします。遠方の花を撮りに出かけたい場合は、ネット環境があれば「クリンソウ見ごろ、千手ヶ浜 2020」のようにして検索すればけっこう良い情報が得られます。

 

 サークルに入ろう

 花の写真もよりよいものを目指すならサークル活動に参加しましょう。実践的写真の撮り方を学べ、他の方の作品をみて学べる。なにより作品発表の場である展示会に参加でき、多くの方に自分の作品を見てもらえる機会が得られるからです。

 プロは風景写真や人物写真、スナップ写真などそれぞれ得意分野を持っています。花のある風景写真では斎藤友覧(さいとう ともみ)氏の作品が美しい。花の写真では田ノ岡哲哉氏前田絵理子氏が素晴らしい写真を見せてくれます。野の花の写真ではいがりまさし氏の右に出る方はほとんどいないのではないでしょうか。